工業用毛糸について


■工業用毛糸って何?

 工業用毛糸とは、アパレル製品を生産するために使用する、芯に大量に巻き付けられたコーン巻き毛糸です。
 工業用毛糸は機械で編むのをスムーズにするために、蝋引き糸のように毛糸に油が塗られています。その為編み上がり後に、縮絨(しゅくじゅう)という油落としの洗濯作業が必要になります。
 多くの場合縮絨後はサイズが小さくなるので、本番を編む前に、スワッチという試し編みが必須です。収縮率は毛糸によって違ってくるので、ゲージを取った後、それを縮絨して縦横それぞれどのくらい縮むのか確認してから編み図の目数や段数の修正が必要になります。
 工業用毛糸は手芸店で販売されている糸とはちがい、取り扱いに関して上記の他にもいろいろと作業があるので、正直、素人にはハードルが高めの糸です。
 ですが、珍しい糸同士の一期一会の組み合わせに出会った時の驚きは格別のものがありますので、ぜひ、臆せず小物からチャレンジ頂ければと思います。

■どこで手に入るの?

 工業用毛糸は、主にアパレル製品の企画時に製作したサンプル糸や、生産終了時に余剰となった残糸などのため、市販するために生産された商品と違い、一般の小売店ではまず見かけません。
 そのため、入手方法はとても限られています。海外毛糸や特殊な糸を主に取り扱う、毛糸専門店や、手芸材料を扱う問屋、大手手芸店のポップアップストア、アパレル向け糸の専門商社の一般向け通販サイトなどで手に入ります。
 また、品質にあたりはずれはありますが、オークションサイト、フリマサイトでも手に入ります。こちらは個人、アパレル糸の専門商社やその関係者が出品していますが、糸の保管方法や入手ルートなどのバックグラウンドがはっきりしないため、取引の前に相手の評価を確認して問題のなさそうなことを確認して取引するのが無難です。でも、そんな糸に限って面白いものが見つかったりするので悩ましいところです。


■ふつうの毛糸にはない難しさ

 一期一会の組み合わせが魅力の工業用毛糸ですが、その性質から普通の毛糸にはない準備や仕上げ作業が必要です。
 工業用毛糸は機械で編むのをスムーズにするために、蝋引き糸のように毛糸に油が塗られています。その為編み上がり後に、縮絨(しゅくじゅう)という油落としの洗濯作業が必要になります。ほとんどの場合縮絨後はサイズが小さくなるので、本番を編む前に、スワッチという試し編みが必須です。収縮率は毛糸によって違ってくるので、ゲージを取った後、それを縮絨して縦横それぞれどのくらい縮むのか確認してから編み図の目数や段数の修正が必要になります。
 また、巻かれた芯に記載されている素材情報と実際の毛糸が一致していないことも多く、混率が不明のことも少なくありません。素材によっては注意する取り扱い方法が変わるので、メンテナンスの有無(洗濯や保管方法)によっては調査が必要になることもあります。
 さらに、撚りの向きの関係で斜行という現象が起きてしまうので、反対撚りの糸と組み合わせて使用する必要が発生したり、適合針の選定に悩むこともしばしばです。
 ここまでで、書いている私自身も面倒な気持ちになってしまいますが、これらの注意点を取り扱いについてでまとめてありますので、ぜひ参考にしていただけたらとおもいます。

■どんな作品に使えるの?

 工業用毛糸は実に多くの種類があります。
 家庭用編み機での機械編みはもちろん、数本組み合わせてセーターやショールなどの大物からマフラーやニット帽などの小物まで様々な手編み作品にご利用いただけます。ポンポンやフラッグのついた珍しい糸を組み合わせたり、袖口や襟元、モチーフなどのポイントにあしらったりしても面白いものができます。
 また、さおり織をはじめとした織物などの材料としても人気です。さいきんは複数のメーカーから、家庭向けに卓上の織機が販売されています。この機械で織り上げた布でマフラーやショール、洋服を仕立てることもできます。マットやバッグなどの服飾以外の作品も作れます。
 工業用毛糸は、偶発的にでた処分品のため、量的に着分をに満たない量しか手に入らないことがあります。でも市販の糸やほかの機会に手に入れた糸と組み合わせたりポイント使いすることで、有効に活用することができます。
 色々並べて眺めるもよし、組み合わせを考えたり、ちいさな編地をはぎ合わせてみたりと、工夫次第で楽しみは無限大です。 


  

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